「ベトナムでは、定期的に虫下し(駆虫薬)を飲んだ方がいい。」
ベトナム在住の方なら、こんな「噂」を聞いたことがあるかもしれません。経済発展著しいベトナムで、こんな「噂」はもはや過去の話だとする考えもある一方で、やはり、私たち日本人からすれば、衛生面にはまだまだ不安が残ります。今回は、在住者が知っておくべき寄生虫に関する情報を解説いたします。
寄生虫の感染経路について
ベトナムでよく見られる寄生虫は、主に以下の3つのルートから体内に侵入します。
・生野菜や水から(回虫・鞭虫など)
ベトナム料理に欠かせない香草(ハーブ)や生野菜ですが、十分に洗浄されていない場合、土壌に含まれる寄生虫の卵が微量に付着していることがあります。また、水道水も、ろ過や消毒が不十分な場合や老朽化した配管を通る過程で、ジアルジア(原虫)やその他の細菌に汚染されている可能性があります。
・生の肉や魚から(有鉤条虫・顎口虫など)
加熱不十分な豚肉や牛肉、淡水魚(川魚)には、寄生虫の幼虫が潜んでいるリスクがあります。ベトナムフードの定番、バインミーに含まれる肉も調理不十分なことが多々ありますし、ローカルフードである(半)生肉の和え物や、川魚の刺身などは特に注意が必要です。
・皮膚から直接(糞線虫・鉤虫など)
裸足で土や泥水の上を歩いたり、手でそれらに触れたりすることで、幼虫が皮膚を突き破って感染することがあります。
症状について
寄生虫の症状は、初期の段階や軽度の感染では、「なんとなくお腹が張る」「時々軽い痛みがある」「下痢や軟便が続く」といった、日常的な胃腸の不調と区別がつかない場合もよくあります。しかし、悪化して、激しい腹痛、嘔吐、貧血、急激な体重減少などが起こることがあります。また、まれに、寄生虫が腸を突き破って脳や肺、眼などに移行して、重篤な症状が引き起こされる危険なケース(幼虫移行症)もあります。
予防について
過度な生活の制限の必要はありませんが、以下の基本的なことを徹底することで感染症の予防につながります。
- 加熱調理:肉や魚、野菜も中心部までしっかり火のを通ったものを食べるようにしましょう。外食の際も、火がきちんと通っているかを確認し、必要なら調理のやり直しを頼んでもいいでしょう。焼き肉や鍋等では、生の魚・肉をつかむ箸と食べる箸をしっかり分けることも重要です。
- 水:水道水を飲んではいけないことは言うまでもありませんが、食器や食材の洗浄、シャワーやお風呂、歯磨きなども、できるだけ高性能の浄水器などでろ過された水を使用するようにしましょう。どうしてもそれが難しい場合は、水道水で洗浄した後、食器や食材に、さっと飲料水を流す、飲料水でうがいするなどの工夫をされるとよいでしょう。また、ローカル店での水や氷は避けたほうが無難です。
- 生野菜はよく洗う:野菜もできるだけ加熱調理されたものをお勧めしますが、生野菜を食べる場合は、自炊する際は、先述のように野菜を浄水でしっかり洗う、外食の場合は、野菜の裏表をよく観察して、虫の卵などが付着していないかを確認しましょう。
- 裸足や素手で土に触れない:公園やビーチ、農村部などを歩く際は、必ず靴やサンダルを履き、土いじりやガーデニング等をされる際は、ゴム手袋等をして、素肌が直接土壌に触れないようにしてください。
では、「ベトナムでは、定期的に虫下し(駆虫薬)を飲んだ方がいい」か?
2018年のベトナム政府の指針では、この「噂」に関連する寄生虫として、土の中で成長し、ヒトの口や皮膚から感染するものが挙げられています。この指針によると、1歳以上を対象とし(一部対象外あり)、国内の地域をこれらの寄生虫感染症の罹患率50%以上の地域、20~50%の地域、20%未満の地域に分類し、それぞれの駆虫回数を、年2回、年1回、不要としています。罹患率は、ハノイ、ハイフォンを含む紅河デルタで41%、ホーチミンを含む東南部で13%とされています。これらのデータを見る際の注意点としては、現在とは状況が異なる可能性があり、同一地域内でも都市部と地方では罹患率の差があると考えられること、医療体制等の影響で必ずしも正確なデータではない可能性があることです。そして、虫下しの薬はすべての寄生虫に万能というわけではなく、妊娠中の方には禁忌となる場合もあります。この資料はあくまで参考として、自己判断での駆虫薬の服用は避け、医師に相談しましょう。そして、手をこまめに洗う、食材をよく洗い、調理する、裸足で外を歩かない、地面に座らない、素手で土を触らない等、衛生的な生活を心がけ、下痢、腹痛、倦怠感等がみられた場合は、医療機関を受診しましょう。
まとめ
せっかくベトナムで暮らしているのだから、ローカルグルメや豊かな食文化を楽しみたいもの。しかし、寄生虫のリスクは常に隣り合わせです。「正しく恐れ、正しく防ぐ」ことが、現地での快適な暮らしを守る鍵となります。少しでも体調に異変を感じたら、我慢せずに医療機関に相談してください。皆様が、健康で充実したベトナムライフを送られることを心よりお祈りいたします。




