「ベトナムに引っ越すことが決まりました。こどものワクチン、どうしよう?」
この時期になると、そんなご相談を多くいただきます。「日本のスケジュールのままでいいの?」「ベトナムならではのワクチンはあるの?」といった疑問は、多くのご家庭が感じるものです。今回は、ベトナム渡航前後のワクチンについて分かりやすく整理してみましょう。
まず基本として、ワクチンの接種スケジュールは日本とベトナムで大きく変わるわけではありません。ただし、使用するワクチンの種類が異なる場合があります。例えば当院では、日本で一般的に使用されている「5種混合ワクチン」ではなく、6種混合ワクチンを使用しています。そのため、1回で予防できる病原体の数や接種間隔が多少変わることがあります。すでに日本で接種を進めているお子さんについては、母子手帳をそのままお持ちいただければ、月齢や接種歴に合わせて個別にスケジュールを調整します。
次に、よくいただく質問が「ベトナムでは麻疹(はしか)が流行していると聞いたのですが、早くワクチンを打てますか?」というものです。結論から言うと、早期接種は可能です。当院では麻疹ワクチンを生後6か月から接種することができます。ベトナムでは時折麻疹の流行がみられ、乳児を連れて渡航する場合には心配になることもあるでしょう。一般的に1歳近くになると、お母さんから赤ちゃんへ受け継がれた移行抗体がほぼ消失するといわれています。そのため、1歳未満でも事前に接種しておくことが勧められる場合があります。ただし、この場合でも1歳を過ぎた後に通常スケジュールとして再度接種が必要になります。
また、「ベトナムは蚊が多いので日本脳炎が心配です」というご相談もよくあります。当院では日本脳炎ワクチンを生後9か月から接種することが可能です。都市部での生活のみであればリスクはそれほど高くないとされていますが、地方への旅行や長期滞在を予定している場合には事前接種を検討することをおすすめしています。当院で使用している日本脳炎ワクチンは日本の製剤とは異なり、2回接種(2回目は1年後)で基本的な接種が完了するタイプです。
さらに、日本ではあまり一般的ではないものの、ベトナムでは接種を検討したほうがよいワクチンもあります。例えば、お子さんが成長して屋外活動が増え、動物と接触する機会が増える場合には狂犬病ワクチンを考慮することが重要です。ベトナムでは現在も狂犬病による死亡例が報告されており、野犬や放し飼いの犬も多いため注意が必要です。
また、1歳を過ぎたらA型肝炎ワクチン、2歳を過ぎたら腸チフスワクチン、4歳を過ぎたらデング熱ワクチンも検討することができます。これらは日本では感染リスクが比較的低いため一般的には接種されないことが多いワクチンですが、東南アジアでは予防の重要性が高い感染症です。
さらに忘れてはならないのがBCGワクチンです。日本では生後5〜8か月頃の接種が推奨されていますが、未接種のままベトナムへ渡航する赤ちゃんの場合は、できるだけ早めに接種することをおすすめしています。ベトナムは現在も結核の罹患率が高い国の一つであり、特に免疫力の弱い乳幼児では重症化のリスクが高いため注意が必要です。 最後に、原先生からのメッセージです。
「日本の定期接種を”土台”として、その上にベトナム特有の感染症対策を上乗せしていくことが、海外でお子さんの健康を守る最も安全な方法です。」
当院では、お子さん一人ひとりの接種歴や年齢に合わせて、個別のワクチンスケジュールをご提案しています。ベトナムへの渡航や引っ越しを予定されている方は、ぜひ母子手帳をご持参のうえ、お気軽にご相談ください。大切なお子さんの健康を守るため、一緒に最適な予防計画を考えていきましょう。




