ケーススタディ： Sさんは72歳の退職秘書です。糖尿病、高血圧、コレステロールの病歴があり、最近、夫を癌で亡くしました。息子、義理の娘、そして2人の子供と暮らしています。最近、介護施設でボランティアの仕事を始めました。同じ介護施設で働く家族の友人から、Sさんが廊下を何度もさまよい、職員用喫茶室に戻れなくなるという異常な出来事があったと報告がありました。彼女は以前にも何度も交通事故を起こしており、中には横断歩道で歩行者に衝突する事故もありました。息子さんは将来の事故を避けるために車を売却することにしました。様々な説明があったにもかかわらず、彼女は事故の記憶も、息子さんが車を売却した理由も思い出せませんでした。Sさんはまた、インドネシア人の男性とオンラインで友人関係を築きました。子供たちによると、彼女は高級ハンドバッグなど、オンラインで異常な買い物をしているとのことでした。Sさんが問い詰められた時、そのハンドバッグがこの男性からの贈り物なのか、彼女が自分で購入したものなのかは不明でした。息子が彼女の銀行取引明細を確認したところ、彼女がこの男性に数万ドルを送金していたことが判明しました。Sさんの家族はこのオンライン詐欺について警察に届け出ました。適切な医療検査の結果、Sさんは気分と行動に問題のある初期段階の認知症と診断されました。 

認知症は、患者とその介護者に影響を与える、生活に支障をきたす病気です。現在までにこの病気を完治させる治療法はなく、進行性で時間とともに症状が悪化していきます。症状の悪化を抑えるには、早期診断と治療が鍵となります。認知症は、主に記憶障害や物忘れに関連するものだと思われがちですが、朝食を食べたのを忘れてまた食べ物を求めるような場合、それは初期の認知症ではなく、すでに進行した認知症です。 

診断は臨床診察中に得られる  

認知症は「臨床診断」です。機械、血液検査、スキャンなどで認知症の有無を判定することはできません。脳卒中や腫瘍などの可能性を除外するために、脳スキャンが推奨されます。患者さんの病歴を徹底的に評価し、脳卒中、パーキンソン病、その他の脳疾患を示唆する兆候を評価します。患者さんの記憶力や思考力に関する質問を行い、パフォーマンスを評価します。また、認知症の最終診断を支援するために、患者さんとご家族への聞き取り調査も行われます。これには、経済的な意思決定能力や、服薬によるセルフケア能力などが含まれます。  

早期診断が鍵  

認知症を完治させる薬はありません。しかし、病気の進行を遅らせる薬はあります。また、興奮や行動の変化といった潜在的な合併症の管理にも使用できます。認知症の治療薬は早期に開始すると、治療への反応が良くなる傾向があります。研究では、認知症の治療を遅らせると予後が悪くなることが示されています。治療開始前に長期間認知症の問題を抱えていた患者は、早期に治療を開始した患者ほど良好な状態ではありません。認知症の症状をコントロールするための薬は、錠剤や皮膚に貼るパッチの形で提供されます。 

診断のスティグマ  

大切な人が認知症と診断された時、それは受け入れ難いものです。患者と家族は、その情報を処理する時間が必要です。患者と家族がしっかりとした支援体制を築くことが重要です。小さなお子様がいるご家庭では、大切な人の認知症診断によって大きな影響を受け、気分や学校での成績にも影響が出る可能性があります。そのため、小さなお子様のいるご家庭は、学校と常に良好なコミュニケーションを保ち、必要に応じて支援や指導を求めるべきです。これは、お子様の精神的な健康に役立ち、家庭での試練に対処するための精神的な忍耐力を強化することにもつながります。認知症の人の症状は多種多様であることを知っておくことは重要です。認知症に対する偏見をなくし、大切な人が認知症になる危険にさらされていると思われる場合は、より多くの人々に支援を求めるよう促す必要があります。